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私は公務員です。
ある時、横浜で開催される国際エイズ会議エイズを担当するために、
エイズ関連の部署に配属となりました。
全くわからない世界でしたが、エイズ啓発やイベントの一環として、
「ストップ・ザ・エイズ」と書かれているポスターを
当時話題のJリーガーなどの協力を得て作成し、
あちらこちらに貼ったり、ビデオを作ったり、新聞広告を出したり
私は夢中になって国際会議を受け入れるための準備をしました。
没頭すればするほど、社会的意義のある大事な仕事をしているという
自負につながりました。
とにかく自分なりに精一杯頑張っていました。
そんな中、後に大切な友人となるA君と知り合いました。
彼はHIVポジティブです。
彼は仲間とともに心の叫びや思いを
詩や文章に託して冊子にするという活動をしていました。
そう、彼はとても前向きな人。
いつも明るく振るまっている。
「一人理解者が増えると一日寿命が延びる」と言いながら、
自分からどんどん友人を増やしていました。
そんな前向きな彼のことですから、
具合が悪くて入院中の彼をお見舞いに行った時も
「冷蔵庫にプリンが入っているから食べていってね」などと
私に気を使ってくれました。
熱を出してしんどいはずなのに、
自分のおかれた状況はあっちにやって、
私のことに心をさいてくれるのです。
私は彼の優しさに、心は洗われていくようでした。
「ストップ・ザ・エイズ」!!
お見舞いを終えて、病院の階段を降りていたときです。
私が作ったと同じようなポスターが目に飛び込んできました。
私はぎょっとなりました。
私たちが夢中になって貼ったまさにあのポスターと同じ言葉が
目の前で大きな顔をして白い壁を占領していたのです。
ああ、いったい私は何をやってきたんだろう。
この言葉は、彼らにとって何の意味があるというのか。
私は今までこれっぽっちも気がつかなかった。。。。
A君や彼の家族、実際に発病して苦しんでいる人たちやその周囲の人たちは
どんな思いでこのポスターを見ているのか、
私は愕然となりました。
たった今、彼の優しさにふれてきたばかりの私は
彼の心の奥深くへ潜む闇の中へたたき落とされたのです。
知らないという事が、人を傷つけてしまう事がある。
思い知らされました。
人々がただ通りすぎるだけの何万枚ものポスターよりも、
HIVの当事者である彼らの声は、
人々の心にまっすぐ響き、真実を伝えてくれます。
だからこそ、その声を少しでも多くの人に伝えていきたい。
現在、私はその思いを持って、朗読会を主宰しています。
A君が亡くなってもう10年が過ぎてしまいましたが、
今でも節目節目には思い出す私の活動の原点です。
※このストーリーは、実際に語られたストーリーを元に書かれておりますが、
語った方のプライバシー保護のため、実際とは異なる部分もございます。
また、ご本人のご好意のもと、掲載しております。 |