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あの日、突然町が地獄になってしまいました。
道端に倒れている沢山の人。
うめきながら救いを求める人。
吹き飛ばされて崩壊した建物。
崩れ落ちた屋根。
瓦礫の山。
火も出ていました。
信じられないような光景です。
私はその中を歩いて避難していました。
どれひとつをとっても
恐ろしくて叫びだしそうになるはずでした。
なのに、不思議なことに何も感じなかったのです。
最後の一人になっても戦えと、
気丈でいることを求められていたあの時代。
どんなに恐ろしい光景を目の前にしても
自分を守るために、心を固く閉ざしてしまったのでしょうか。
それとも、私の感情は完全に死に絶えてしまったのか。
私は、ただただ避難場所まで歩き続けていました。
しばらく行くと、あるところに防火用水があって、
そこには手押しポンプがありました。
そのポンプにもたれかかるようにして
4歳くらいの子どもが死んでいました。
他の死体はみんな横たわっているのに、この子どもだけ立ったまま死んでいる。
その瞬間です。
うわっと涙があふれてきたのです。
完全に色を失っていた私の感情は、
突然悲しみの色に染まり、鼓動を打ち始めました。
どうして、こんな小さな子どもが
一人ぼっちで死ななければならないのか。
どうしてお母さんと一緒じゃないの?
お母さんの胸の中で抱っこされていたかっただろうな。
お母さんと手をつないでいたかっただろうな。
それがだめなら、お母さんがそばにいるだけでも・・・
お母さんはどこ?
お母さんがいない!
きっと屋根の下敷きになって即死したに違いない。
でなければ、必死に探しにくるはずだ。
どんなにか子どもを案じながら死んでいったことだろう。
どうして離ればなれなのか?
様々な想いが駆け巡りました。
それまで堅く凍りついていた心の氷が溶け出していくようでした。
涙があふれ出してきてとまりませんでした。
きっとあの子は天国で待っていたお母さんの
その胸にしっかりと抱きしめらたことだと思います。
4歳分しかお母さんと一緒にいられなかった人生を
取り戻しているのではないでしょうか。
※このストーリーは、実際に語られたストーリーを元に書かれておりますが、
語った方のプライバシー保護のため、実際とは異なる部分もございます。
また、ご本人のご好意のもと、掲載しております。
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