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幼い頃、私は、金木犀の花が大好きでした。
きれいなオレンジ色。
小さくてもきちんと4つの花びらに分かれている。
なんだかとてもかわいく、
それでいてしっかりとしたものに見えたのです。
毎年、私はその時期になると、
金木犀の確かな香りに導かれて公園へ行きました。
地面に散り落ちた金木犀の花を集めるために
私はいつも急ぎ足でした。
あの特別な匂いは、何の説明も必要なく、
私をときめかせてくれたのです。
その年も、いつもと同じように公園に行きました。
そして、掌の中におさまる程の小さなタッパーに
夢中で金木犀の花々を集めました。
真っ赤なタッパーにぎっしり詰め込んだ
鮮やかなオレンジ色の花々。
これほどみずみずしく、
これほど可憐で、
これほど薫り高いものは他にあるだろうか。
それは私にとって、
大好きな宝箱に入れられた沢山の小さな宝石でした。
私は実に誇り高い気持ちで、
小さな宝石箱を握りしめたものです。
しばらくして私は、夢中になって集めた金木犀を確認すべく、
真っ赤なタッパーの中に目をやりました。
当然、そこには私の宝石たちがぎっしり詰まっているはずでした。
ところが、小さなしわや、何かで傷ついて茶色くなっている花がほとんどで
私のオレンジ色の金木犀はなくなっていたのです。
はち切れそうなほどみずみずしく輝いていた花のひとつひとつが
どこかに行ってしまったのです。
小さくても、あんなにきれいだったのに・・・。
あんなに鮮やかで、しっかりとしていたのに・・・。
何故?
それは、美しく咲き、やがて散りゆく宿命を背負った
花の亡骸でした。
毎年毎年、集めていた金木犀の花。
ときめきをひとつひとつ拾って作った自慢の宝石箱。
でも、ほんの少しの時間でその輝きは消えてしまったのです。
私は初めて、命あるものは永遠ではない、
美しいものが永遠に美しくはない、という真実に
わずかながら気づいたような気がします。
幼稚園の頃の思い出です。
※このストーリーは、実際に語られたストーリーを元に書かれておりますが、
語った方のプライバシー保護のため、実際とは異なる部分もございます。
また、ご本人のご好意のもと、掲載しております。
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