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ある組織に入って数ヶ月目の出来事。
私は「 100 キロ歩く会」の世話係をすることになりました。
スケジュール管理、安全の確保、宿泊先の手配、食事の段取りなど、
仲間たちで仕事を分担し、当日に向けて準備を整えました。
もちろんそんな仕事をするのは初めてのこと。
私をはじめ、みんな与えられたことをこなすのに精一杯です。
私の役割は、食事の段取り、
4 泊 5 日で歩く子供たちに弁当を提供することでした。
歩くペースを考えて、食事時に到達するだろう地点で弁当を手配します。
私は、前年度の事例を照らし合わせた万全の準備に
すっかり安心して当日を迎えました。
ところが、その年はたまたま、会の途中で台風がやってきて
旅のペースが予定と狂ってしまったのです。
そこで、弁当を予定の場所ではなく、別の地点に変更することにしました。
すぐに、変更の手配を始めましたが、
その中に、引率係に伝えるという項目は入っていませんでした。
私はこの変更事項が引率係に伝達されるべき重要なことだとは思わなかったのです。
一方、そのことを知らされていない引率係は、
台風の中、疲れに負けそうになる子供たちをはげましながら
ただただ、弁当の待つ予定の場所をめざして歩いていました。
悪天候のため、過剰な疲れが体中を襲ってくる中で、
もはや心の支えとなるのは、たったひとつの弁当でした。
ところが、やっとの思いで到着した場所に弁当がない!
確実に得られるはずの最大の楽しみがなかったのです。
大きな落胆とともに、疲れはどん底へとまっしぐら。
おまけにどこまで歩けば弁当が食べられるかもわかりません。
どうなってるんだ!
こんなこともわからない奴は、やめてしまえ!
上司はものすごい勢いで私を怒鳴りつけました。
引率係に混乱と不安をしいた私の行為に対し、
怒りは心頭に達したようでした。
そんな上司を先輩はなだめ、
なんとかその場を取り繕おうと必死でしたが
私は、怒る上司に対して、心の刃を向けていました。
「そんなこと、初めてでわかるわけないじゃないか!」
口にこそ出さなかったけれど
怒りに満ちた目で上司を凝視し、彼の叱責がいかに理不尽かを訴えていました。
それからしばらくたった日のことでした。
ある会合の席で、私はたまたま、
私を一喝した上司の前に座ることになりました。
あの時の場面が急速に蘇り
居心地の悪い思いが体の中を駆け巡りはじめました。
でも、新人だった私の顔など覚えているはずもない。
私は彼の記憶の外に自分の身を置き、席に座ったままでいました。
ところが彼は、笑いながら
私にこう言ったのです。
君、あのときすごい目でぼくのことにらんでたね。
私は、その言葉にびっくりしました。
まず、彼が新入りの私の顔を覚えていたこと。
そして、あの時の私の様子まで見ていたこと。
彼の怒りは頂点に達していたはずです。
少なくとも私にそれ以外のことは見えなかった。
でも実は、上に立つものとして叱る、
リーダーとして、当然の役割として叱る、という行為を通して
全体を動かしていたということが、今わかった気がしたのです。
あからさまな感情しか見えなかった私の目は一気に覚めました。
彼のキャパシティーの大きさは私の想像の領域を超えていたのです。
それまで「新人」としての自分の立場だけで
あの時の出来事を見ていた私は、
初めて「上司」としての目線に気づきました。
全体を見て、深い配慮ある指示ができるリーダーシップというものに気がつきました。
こうして一瞬のうちに、私の彼に対する思いは
怒りから尊敬へと変わったのでした。
※このストーリーは、実際に語られたストーリーを元に書かれておりますが、
語った方のプライバシー保護のため、実際とは異なる部分もございます。
また、ご本人のご好意のもと、掲載しております。
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