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僕は両親の愛をまっすぐ信じて育ちました。
それは安全で、実に平和な日々でした。
父は、仕事がら家を空けることが多かったのですが、
親子3人の時はいつだって、
食卓は穏やかで暖かい時間に包まれていました。
その日も、久々に家に帰ってきた父は
僕にたくさんの笑顔とおみやげをくれました。
僕は、嬉しくてすっかり有頂天です。
いつもの幸せな団欒が
部屋中に広がっていました。
ところが、ふと気がつくと、
父と母はこれまで見たこともないような剣幕で
喧嘩を始めていたのです。
激しい口論は、部屋の空気を引き裂き、
今まで僕を包んでいた穏やかな過去を吹き飛ばしました。
急に襲いかかった激しい嵐に
僕の心は一瞬にして巻き込まれてしまったのです。
「包丁をもってこい!」
ついに父の口から出てきた言葉は
僕への有無を言わせぬ命令でした。
僕は恐さに震えながら、言われるがまま、
台所へと歩いていって、包丁を自分の手でつかみました。
そして、父に手渡しました。
僕の心は、完全に機能を停止したのです。
僕はもう、一歩も動けなくなりました。
何も見えなくなりました。
何も聞こえなくなりました。
僕の時間は完全に止まってしまったのです。
それでも、その傍らでショックで凍りついた母の表情は
今も頭に中に焼きついています。
結局、父は包丁を手にした途端、我に返ったようでした。
まるで魂を失った抜け殻のように、
がっくりと肩を落としていました。
最悪の事態は回避され、嵐は消え去ったのです。
それでも、ぼくは、ただ、ただ、
二人の諍いに巻き込まれることしかできず
怖い気持ちでいっぱいでした。
僕の心はいつまでも恐怖にふるえていました。
今思うと、これが僕が「争い」を知った原点です。
あの日、僕は人を恐いと思う感情に出会い、
人生は、必ずしも穏やかでないことを知ったのです。
※このストーリーは、実際に語られたストーリーを元に書かれておりますが、
語った方のプライバシー保護のため、実際とは異なる部分もございます。
また、ご本人のご好意のもと、掲載しております。
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