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私には、妻と一人の娘がいます。
私は教師、妻は医療従事者として
ずっと共働きを続けてきました。
私たち夫婦にとって仕事とは
単なる日々の糧を得るための手段ではなく
自分が生きていく道として、とても大切なものでした。
また、仕事だけではなく、
休みの日には、夫婦揃ってボランティアにも携わってきました。
私と妻は、強い使命を感じながら
共に長い年月を過ごしてきたのです。
そんな充実した日々と使命感の影に置き去りにされたのが、
私たちの愛する娘でした。
当然、家庭はいつも留守がちですから
娘は、ほとんどの時間を、ひとりぼっちで過ごさざるをえませんでした。
こうして、中学校、高校と成長していくに従い、
彼女の生活はどんどん荒れ果てていったのです。
私たちは、取り返しのつかないことをしてしまったのだろうか?
娘の荒れた態度を見るにつけ、私は悲しみに暮れました。
そして、自問の日々が始まりました。
社会に貢献する活動をしながら、
自分たちの娘に十分な愛情をそそげなかったなんて。
本当にこんなことをしてきて良かったのだろうか?
父親として、母親として、果たしてこれで良かったの?
長くて太い黒のトゲが心の中に侵入し、
年を重ねるたびに、どんどん深く
悲しみの果てまで突き刺していくような気がしました。
娘が学校を卒業し、仕事を始めてからもずっと
そのトゲは突き刺さったままでした。
そんなある日、私たち3人が話をしていたときのことでした。
妻が、娘に対して抱いてきた長年の気持ちをついに打ち明けたのです。
「これまで、仕事やボランティアをやってきたために、
あなたに寂しい思いをさせてしまったね。」
すると娘は言いました。
母親でありながら、女性として仕事を持ち、
社会に貢献している姿を
私はずっーとすぐそばで見てきました。
それが、どれだけ私のプラスになったことか。
そしてどれだけそれが私の誇りだったか、
おかあさん、わかってる?
娘は先に帰り、私と妻の二人が残りました。
娘の姿が見えなくなったとたん、
それまで気丈にしていた妻が、突然泣きくずれたのです。
もうこれ以上の悲しみを蓄えられなくなった堰は
一瞬のうちに崩壊したのです。
長い間休むことなく積み上げてきた悲しみ、
終わることのなかった自問、
そして深く澱んだ罪悪感から一気に解放されたのです。
それまで続いていた灰色の長い夜に光が射すように、
妻の心には歓びが湧いてきたようでした。
まるで新しい命が芽吹いたように。
今でもあの時の妻の姿が鮮やかに蘇ってきます。
長い間心に突き刺さっていたトゲが一瞬のうちに取り除かれ、
その傷口を洗い流してくれた大量の涙を
私は今も忘れられずにいます。
※このストーリーは、実際に語られたストーリーを元に書かれておりますが、
語った方のプライバシー保護のため、実際とは異なる部分もございます。
また、ご本人のご好意のもと、掲載しております。
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