|
僕の愛犬「シロ」は、
かわいくて、人なつっこくて、近所の子どもたちにも人気者。
散歩に出かけたら必ず
道端ですれ違う人たちみんなにしっぽを振って犬特有の挨拶をします。
誰にでも臆することなく愛嬌を振りまくシロ。
僕の最愛の犬です。
そんな自慢のシロと一緒に、その日は
予防注射のため動物病院へと出かけました。
道行く人にしっぽを振る挨拶は、言うまでもなく完璧なシロ。
行きも帰りも完璧なシロ!
向こうからやってきた見知らぬ女性にも
シロは親愛の情をふりまきながら
人なつっこい顔をして、近づいていきました。
僕は、少し嬉しくて、シロのはしゃぎぶりを
ほほえましくも誇らしく見ていました。
「まあ、かわいいわね」の言葉を
受け取る準備をしながら。
「シッ シッ!」
不意をつかれました。
彼女へ準備した行動が、一瞬のうちに真っ白になって
正反対のものとすり替えられました。
けれどシロは、容赦なく近づいて、彼女をジーっと見続けています。
「シッシッ、あっちにいって!!」
女性の態度はさらに硬直化し、冷たくシロを追い払います。
シロは仲良くしようとしているだけなのに・・・
そう思う気持ちと裏腹に、
女性の嫌悪感はストレートに僕の心を攻撃しました。
僕は少しうろたえながらも
なんとかシロを女性から離し、家路へつきました。
家に着いた後、動物病院でもらった
予防注射についての説明書を読んでいると、
ある一行がふと、僕の目に入ってきました。
「世の中は、犬の好きなひとばかりではありません」
突然、彼女の嫌悪感が僕の体中を駆け巡りはじめました。
それは今まで経験したことのない
不思議でどんよりと重くのしかかってくるような感情でした。
どんなに僕がシロをかわいいと思っていても、
そのシロをいやだと思う人もいるんだなぁ。
僕はこうして初めて実感として、正反対の気持ちを確認したのです。
それは、もうひとつの準備を心の中で形成できた瞬間でした。
※このストーリーは、実際に語られたストーリーを元に書かれておりますが、
語った方のプライバシー保護のため、実際とは異なる部分もございます。
また、ご本人のご好意のもと、掲載しております。
|