県立広島大学 保健福祉学部 作業療法学科 3年生授業
「プレイバックシアターの教育的活用」

2012.1.27

日時 : 2012年1月27日(金)13:00~16:10
会場 : 県立広島大学 三原キャンパス
対象 : 作業療法学科3年生学生、教員
人数 : 20人


●全体の流れ

1. ワークショップ
 a.情報交換ゲーム 「マッピング」
  参加者が、テーマに応じて自ら動き、お互いの情報交換を行う
   ・出身地
   ・人前で発表することが苦手、得意
   ・実習の体験 良い思い出、苦い思い出 など
 b.チームワーク実習 「1・2・3 ヘルプ!」
   ・今日の昼食
   ・専門分野・疾患
   ・この1年で作業療法士として一番大変だったこと
   ・この1年で作業療法士として一番うれしかったこと など
 c.役者になるためのウォームアップゲーム 「酔っ払いと警官」
 d.即興劇にチャレンジ  「赤ずきんちゃん」
   ・4つのシーンで4つの役を演じてみよう
 e.ストーリーを演じてみよう
  即興による再現ドラマ (手法 ストーリー)

「作業療法への入り口」 -学生より-

 小学生の頃、障害を持つ妹の作業療法セッションに毎回、付き添っていた。担当の作業療法士が妹を本当にかわいいと思って接してくれているのが伝わってきた。そればかりか、家族である私のこともセッションの場を共につくる一員として扱ってくれた。その場での主役ではないはずの私も、きちんと大切にされ、楽しめる場だった。そして毎回、妹は普段、見せないような笑顔を見せた。この体験が、私が作業療法士を目指す原点になった。

「傷」 -教員より-

 学生として実習に行った時のことだ。ある部屋に評価道具を取りに行くと、中から小学生の男の子が騒いでいる声がした。入るのを戸惑ったが、どうしても明日の準備のためにその道具が必要だった。思いきってドアを開けようとすると、男の子が反対側からドアを押し返してきた。軽い気持ちでふざけて、ドアの押し合いをしているうちに、ドアが男の子の側へバンと勢いよく開き、彼の足の皮膚を切ってしまった。彼は、パニックを起こし大声をあげた。私も「何ということをしてしまったのだろう」と頭が真っ白になった。そして、暴れる彼を皆で押さえながら、縫合をするという大惨事になってしまった。私も混乱と不安でいっぱいのまま、震える手で必死に彼を押さえていた。

「患者さんからもらったもの」 -学生より-

 1年生、実習のとき、末期がんの女性と出会った。「家に帰りたいわ」。いつも笑顔で言う彼女の心にどれだけ辛い思いがあるだろうか、と胸が痛んだ。彼女には、家で彼女の帰りを待っている息子がいたのだ。 実習が終わる日、「あなたは私の息子と同じくらいの年よ。がんばってね」と言われた。学生である私の未来を思ってそう声をかけてくれた彼女の気持ち。そして、彼女のこれからを思うと胸がいっぱいになった。これから、がんばらなくてはと強く思った。

アンケート記入・回収

≪観客体験より≫
◎その人の経験を客観的に見ることができた。アクターが演じているのを見ることで、語っているテラー(語り手)の気持ちや、実際の場とは違うかもしれないけど、そこに出てくる登場人物の気持ちを考えることができた。
◎本当にそのシーンを見ているようだった。同級生や先生のいつもと違う一面を見ることができた。「人の気持ちになる」ことは大切だと感じた。視点を変えると、たくさんのことが見えてくると思う。
◎テラーは、自分の過去の出来事を振り返るだけでなく、目の前で演じている場面をみて、そのときの自分の思いと、今の思いが両方重なって、客観的に振り返れるきっかけになるのではと思った。
テラーは、辛い過去をみんなの前で話していて、すごく勇気があると思った。その話をしてくれたことを、自分の実習やこれからの生活にも役立てたいと思った。
◎アクター全員が、テラーの気持ちを大事にして演じているのがとても伝わってきた。
≪アクター体験より≫
◎最初は話を聞いて「できるかなあ」と不安な気持ちだったけど、演じていくうちに自分の中から自然に言葉が出てきたり、行動したりすることができた。また、実際にその人の役になりきることで、その人の当時の気持ちが理解できたような気がした。
◎テラーの話を聞いて感じたものを伝えるために、たくさんのことを考えて演じるのだと思った。また、自分だけでなく他のアクターのことを考え、相手の行動や雰囲気をうまく感じとって、場に合わせた演技が必要だと思った。
◎テラーが自分をアクターとして、その役に選んでくれたことを本当にうれしく思った。自分の中の気持ちを見つめ直すこともできた。他のクラスメイトの気持ちにも触れることができたので、とても良い経験だった。「がんばろう」と思えた。
≪テラー体験より≫
◎「やっぱり自分はこれがきっかけでOTを目指しているのだ」という気持ちを再確認できた。
◎自分を振り返るきっかけになった。また、新たな気持ちでがんばっていこうと思えた。
≪自分について気がついたこと≫
◎最近は課題が多く、時間に追い込まれて、ただこなすだけのような学習になっていることもあったが、自分がOTになろうと思った原点を見て、「自分は何をやっているのだろう」、「課題をこなすだけに何の意味があるのだろう」と思った。「(あの先生のような)OTになりたい」という気持ちがこんなに強かったのだと気付いた。
◎自分の中で経験し感じたことを、思った以上に奥にしまいこんでいるのだと思った。
◎「自分って主観ばかりで生きているな」と気付くことができた。
 
≪同級生について気がついたこと≫
◎自分も含め、今日、テラーになっていない人、みんなそれぞれいろいろな経験を持っていて、そのときの強い思いを誰もが持っているのだなと気づいた。
◎実習から学ぶものは人によって違うと思った。
◎ある人のストーリーを見て、観客の同級生が泣いているのを見て、みんな人の気持ちに寄り添える人なのだろう、と思った。そして恥ずかしがらずに演じることができ、涙を流すことができる私たちは、良いクラスメイトだ!と思った。
◎みんな行動力がある!!ということに気付いた。また、人の気持ちに寄り添ったり、考えたりすることができる人たちが、私の周りにはたくさんいるということを改めてうれしく思った。
≪教員より≫
◎学生の感受性の強さに感心した。自分の体験を良いことも良くないことも語ることの大切さを学んだ。こういう機会を学生にももっと提供したい。
◎人は誰でも演じることができると思った。自分じゃない人のことを想像できるから、他人の気持ちがわかるというのは、人に備わった能力だと思った。観客では、感受性の畑が耕されている感じがした。
◎学生の皆の感情体験と、それに共感する姿を見て、普段とは異なる姿を見せてもらった。

1. お友だちの話は聞けましたか?(26人回答)

聞けた どちらともいえない 聞けなかった
24人 1人 1人
92.4% 3.8% 3.8%

2. お友だちの気持ちはわかりましたか?(26人回答)

わかった どちらともいえない わからなかった
21人 4人 1人
80.8% 15.4% 3.8%

3. 自由に表現できましたか?(26人回答)

できた どちらともいえない できなかった
17人 7人 2人
65.4% 26.9% 7.7%

4. 「こうしよう」という、ひらめきがありましたか?(26人回答)

あった どちらともいえない なかった
16人 8人 2人
61.5% 30.8% 7.7%

5. お友だちと協力できましたか?(26人回答)

できた どちらともいえない できなかった
15人 10人 1人
57.7% 38.5% 3.8%

※ストーリー掲載にあたり、私たちは、ストーリーを語ってくださった方(テラー)のプライバシー保護のために、以下のことを遵守しています。
・事前にテラーの了解を得ています。
・テラーが特定できないように、表現に配慮しています。
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