読売新聞/2002.1.6

家族会で悩み共有

介護によるストレスを和らげられるよう、「ケアをする人のケア」の取り組みが最近広がっています。お年寄りも連れて参加できる家族の会、精神科医による介護カウンセリングなど、試みはいろいろです。ストレスをためると、お年寄りにもしわ寄せが行きがち。心の“赤信号”に早く気付き、意識的に休養をとるなどリラックスを心がけたいものです。(武中英夫)

ストレス・孤独に救いの手 「介護者ケア」広がる 精神科医がカウンセリング

 埼玉県北本市の井上俊彰さん(72)は、毎週火曜日に福祉センターで開かれる介護者の自主グループ「ももの会」を楽しみにしています。アルツハイマー病で痴呆の妻(69)を自宅で10年余り介護する井上さんには、息抜きの貴重なひとときだからです。  同会は3年前、介護する家族を支えようと、日本社会事業大学教授の高橋流里子さんを中心に発足しました。孤立する家族をまずケアしないと、ストレスからお年寄りに当たる心配も」と高橋さん。  お年寄りを家に置いて来られない家族のため、会場ではボランティアが見守りの手伝いも行います。悩みを打ち明けあい、趣味を楽しむと共に、みんなで知恵を出し問題解決も図ります。年会費は千円。「同じ介護の苦労をしている人なので愚痴も言える。ほっとできる」と井上さん。

精神科医によるケアも始まっています。神奈川県伊勢原市の東海大学医学部付属病院は一昨年から「家族介護カウンセリング」の専門外来を開いています。長男の嫁などが一人で負担を背負っているのに、その夫などが大変さを理解していないケースが多いため、家族で一度集まり、話し合ってもらうのが狙いです。
 「介護する人が心にしまった不満や怒りの感情などを語り、他の家族と分かち合うことで「コミュニケーションも始まる」と担当する同大学講師の渡辺俊之さん。
 それをきっかけに、家族同士が役割分担を見直したり、介護サービスを活用したりするようにもなるそうです。
 ケアする人のケアの試みは米国などで進んでいますが、ここ数年、日本でも広がってきました。手探りの状態ですが、たとえば先日立ち上げた市民団体「介護サポートネットワークセンター・アラジン」(東京 03・5969・3387)では、引きこもった家族がまず外に出る気持ちになれるように、アロマセラピー(芳香療法)などで心をほぐす出前サービスを計画、今春から講座を開く予定です。
 また、体験談を語ってもらう観客を募り、その場で演じて再現する即興演劇グループ「プレイバッカーズ」(横浜市 045・824・6013)は、一年ほど前から老人保健施設やホスピスなどへ出張講演に行き始めました。「献身的に介護している人も舞台では主人公、喜びや癒しにもつながっているようです」と同代表の宗像佳代さん。
 介護ストレスと上手につきあうにはどうしたらよいのでしょう。「ケアの心理学」(KKベストセラーズ)の著書もある渡辺さんは、「ストレスから出る症状を知り、早く対応して欲しい。」と<別表>の助言をしています。

自分の時間作る悩み周囲に相談

心地よくケアするために

<ストレスの主な症状>
●朝起きた時、暗い気分
●ひがむなど被害者的ものの見方
●よく眠れない
●間食が増えるなど食生活に変化
●喫煙や飲酒が増える
●ささいなことで怒る
●下痢や食欲低下、頭痛、微熱など体の不調

<ストレスの和らげ方>
●介護しやすい環境作り。花や音楽も活用
●一日一時間でも自分のための時間を
●悩みをしまい込まず周囲に相談
●ショートステイ(短期入所)など介護サービスも活用
●症状によっては専門医に