読売新聞/1999.2.12

観客の苦い思い出、役者が舞台で
即興劇で心の癒し

 観客の過去の体験を役者が舞台で演じる即興劇「プレイバックシアター」の公演が11日、藤沢市鵠沼東の同市民会館で行われた。苦い思い出を観客全員で共有することで、当事者の心の闇に光を当てる新しいセラピー(薬を使わない療法)としても注目を集めている演劇に、主催した地域作業所の関係者など約80人が集まり、舞台を楽しみながら会場で一体感を共有しあった。
 プレイバックシアターは1970年代にアメリカで生まれた即興劇で、劇団員の「コンダクター」(案内役)が客席から無造作に選んだ「テラー」(語り手)に過去の体験談を話させ、役者が舞台で“プレイバック”(再生)して、笑いや涙を誘う。
 横浜市内の劇団「プレイバッカーズ」の宗像佳代代表(50)を、藤沢市大鋸の地域作業所「カフェ・ドゥ・そーじゃん」大関香里運営委員長が招いた。
 宗像さんは95年に米国の演劇学校「アメリカ・プレイバックシアタースクール」を日本人として初めて卒業するなど、国内の第一人者として知られている。
 宗像さんは「過去の苦い体験を私たちが演じることで、客席に一体感が生まれる。苦しみを分かち合えば、精神的な苦痛を和らげることができるはず」と、心の病を持つ人たちを対象に積極的な活動を展開している。
 この日の公演では、4人の観客がテラーとなった。高校一年の時、唯一無二の親友の転居を機に、いじめに遭い、学校に行けなくなったという女子高生は「不登校になったのは、学校に居場所がなかったから」と告白。この体験を劇団員が10分ほどのストーリーに仕立てて演じると、客席は水を打ったように静まり返った。
 「頼りにしていた人がいなくなるのは、本当につらいことですね」との宗像さんの声に、「学校そのものには今もさわやかなイメージを持ち続けている」と少女が答えると、劇団員がすぐに少女の理想の仲間を演じて励ます場面に少女に笑顔が戻った。